銀の月　蒼の風　黎明の海

１２．聖なる歌を　　　　　　貴方に...

　今宵はクリスマス。授業は無い。俺はホグワーツから少し離れた所の丘に立っている

一つの墓の前に来ていた。そう、麗羅の墓だ。







１２．聖なる歌を貴方に...






「姉さん...僕、生きるよ。姉さんの為にも、僕自身の為にも。だから、安心してね」

「姉の前になると一人称が変わるのだな」

「セブルスっ」



　後ろを振り向くといつの間にかセブルスが其処に立っていた。何故此処にと、言わずとも

分かっている。きっと羅水を探しに来たのだろう。ダンブルドアにも何も告げて来なかったから

きっと心配したであろうセブルスに弱弱しい笑みを向ける。その笑みは消えてしまいそうな

儚い笑みでセブルスは何も考えずに羅水を抱きしめる。「どこにも行くな」と呟いて。



「ｸｽｯ　何処にも行かないよ。俺は、何処にもいけないんだ」

「羅ｓ「セブルス。直ぐに帰るからさ。先に帰っててくんない？」



　セブルスは眼を見開いて「何を言っているんだ」と問うが、羅水は相変わらず

笑みを浮かべているだけだった。そんな羅水にセブルスは折れ「早く戻れ」と言い残して

ホグワーツへと戻っていった。不器用な優しさに羅水は思わず笑みを零す。







＊　＊　＊







「セブルス、羅水はどうしたんじゃ？」

「墓の前に居ましたよ」

「麗羅か」



　セブルスとダンブルドアは校長室に居た。先程までクリスマスディナーで大変

盛り上がっていたのだが、それももう終わり、各自解散となった。セブルスは『麗羅』という

名前に反応した。『妖かしの華』でもその名前を聞いたが、その時は恋人の名だと思っていた。

だけど、先程、墓場に行った時は「姉さん」とはっきりそう言っていた。これは如何いう

意味なのだと眼で訴える。



「セブルスが他人に興味を持つなど珍しいのう」

「別に興味を持ったわけではありません。ただ、気になっただけです」

「(それを興味を持つと言うのじゃが；)麗羅は羅水の姉じゃよ」



　「姉？」とセブルスが聞き返すとダンブルドアは頷いた。何でも、羅水は姉である麗羅に

恋心を抱いてしまったらしい。もちろん、そんな事が許されるはずも無く羅水は

麗羅と引き離されてしまった。そして、暫くして麗羅が死んだ事を羅水は知ったと言う。

死因は寿命だった。



「寿命？ 随分若くして死んだのですな」

「いや、彼女が死んだのは８０歳の時じゃよ」

「ですが羅水は」

「羅水はバンパイヤじゃ。人間より遥かに長生きなんじゃよ」

「......羅水を迎えに行って来る。まだあそこに居るのだろうしな」

「そうしてやってくれ。今日は、麗羅の命日じゃ。行っても、暫くはそっとしてやって欲しい」

「......分かりました。失礼します」



　セブルスはダンブルドアに軽く礼をして校長室から出て行った。ダンブルドアはセブルスが

出て行ったドアを哀しそうに見つめていた。



「時が過ぎるのは早い事じゃのう」







＊　＊　＊







　セブルスは先程の墓が見える所で止まっていた。羅水はあの場所から全く動かずに墓を

悲しそうに見つめていた。そして、歌を唄っていた。とてもとても悲しい贈歌の唄を。



ずっと一緒に居ると誓ったのに

君は僕を置いて一人旅立った

置いてけぼりの僕は何を希望に

生きたら良いんだろう

僕の存在理由は君だけだったのに



此処で命を絶ったならば

君は怒るだろうね

それでも君は言うのだろう？

僕を愛していると



僕は気付いてしまったよ 君の心に

家族愛ではないと知ってしまった

抑えられない愛情は行き場も無く

僕の心の中で押し留まる



君が居なくなってしまった今

僕は君の為にも この世を生きよう

そしてこの愛の歌を 君だけの為に唄おうか

貴方は僕の大切な人だから

例え二度と逢えなくても

僕は君の事を愛しているよ







「(これじゃ、まるで麗羅という者が羅水の事を...)まさかな」

「セブルス？ 盗み聞きとは...良い度胸だね？」

「ち、違っ 校長がお前を迎えｎ「問答無用！」





　悪いねセブルス。俺の事を心配してくれたんだろう？　分かっていたけどさ

恥ずかしいじゃないか。だから、照れ隠しに之ぐらいの事許してよ。まだまだ迷惑掛けるかも

しれないけどさ、俺もセブルスの事助けるからさ、セブルスは死なないでな？

もうこれ以上失いたくないんだ。校長も、ハリー達ももちろんだけどね。一番失いたくないのは

セブルス、君だよ？　結構信頼してるんだからね？　俺の信頼を裏切らないでくれよ？　なぁ、セブルス？











































05/11/29